田舎暮らしの30代看護師
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ミステリー

『そして誰かがいなくなる』下村敦史 

 

今回紹介するのは不朽の名作のオマージュ作品ともいえる、下村敦史さん著作『そして誰かがいなくなる』です

著者の下村敦史さんは、1981年京都府生まれ。

2014年に『闇に香る嘘』で第60回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。

同年に発表した短編「死は朝、羽ばたく」が第68回日本推理作家協会賞短編部門候補、『生還者』が第69回日本推理作家協会賞の長編及び連作短編集部門候補、『黙過』が第21回大藪春彦賞候補となります。

その他に『真実の鑑』『アルテミスの涙』『逆転正義』など著書が多数あります。

当ブログでは、『逆転正義』も紹介しております。紹介記事のリンクはこちらをクリック。

また、当ブログでは、なるべくネタバレの無いよう、あらすじ・感想を書いております。

 

あらすじ

 

大雪の日、大人気作家の御津島磨朱李が細部までこだわった新邸のお披露目会が行われた。

招かれたのは作家と編集者、文芸評論家と…..。

最初は和やかな雰囲気だったが、次第に雲行きが怪しくなっていく。

奇想天外、どんでん返しの魔術師による衝撃のミステリー!

 

 

主な登場人物

 

林原凛 女性作家

錦野光一 凛の先輩作家 色男 ノリが軽い

獅子川正 獅子川真とともに活動する作家 正が執筆、真がプロット制作を担当している

藍川奈那子 子連れのミステリー作家

藍川美々 奈那子の娘 3歳

山伏大悟 文芸評論家

安藤友樹 御津島麿朱李の担当編集者

御津島麿朱李 覆面作家 屋敷に皆を招待する

高部 御津島邸に仕える老執事

天童寺 探偵

感想

 

プロローグの不穏さから始まり、何かが起こる危うさが最後まで拭いきれない、これぞ王道ミステリーといった作品でした。

外部からの侵入、脱出も不可能のいわゆるクローズドサークル・ミステリー。

犯人は必ずこの中にいる。

誰もが疑心暗鬼の中で巻き起こる数々の謎。

その動機や心理描写、そして、浮かび上がる各々の因縁。

そのどれもが読者を惹きつけます。

物語の始まりは、覆面作家の御津島麿朱李からの招待状。

それは彼の建てた豪邸のお披露目会の案内でした。

大雪の日に集められた作家たちと、文芸評論家、編集者は御津島と執事に迎え入れられたその豪邸に圧倒されます。

それはまるでミステリーに登場する奇妙な館を細部までこだわって具現化したものでした。

いかにも何かが起こりそうな不穏な館に招き入れられた彼らは和やかにその屋敷を楽しんでいたのですが、御津島が投げかけたある発言から、疑心暗鬼が生まれ、不可解な出来事が起こります。

現実に現れた奇妙な館で、ミステリーが始まります。

というのもこの作品は、著者自身のご自宅が舞台になっています。

面白いのは現実では見たことがないけれども虚構の世界ではお馴染みの仕掛けが満載のお屋敷の中で、現代的な人々がさすがにこんな仕掛けはないだろう、とか、勝手にそこを開けたら怒られるのでは?などと至って普通の感覚でお屋敷に取り込まれてしまいます。

果たして今このお屋敷で起きていることは、御津島の仕組んだミステリーゲームなのか、それとも本当にミステリーのような現実が起こっているのか、読んでいくうちに虚実の境が曖昧になり、次第に翻弄されていくような感覚が未知の体験でした。

まさかの本当に実在するミステリーという、もうその状況だけで面白い。

そして登場人物たちは、これが定番ミステリーならこうなるのでは?といいながらも、ここは現実なのだからそんな行動は軽率なのでは?といたって常識的な判断で行動を起こすのです。

もう、この作品は読者が楽しい以上に作者であり主であった、下村敦史氏本人が一番楽しかったんだろうなというのが細部から伝わってくる一冊でした。

突然ミステリーな世界に落とされた彼らは、本当の事件に巻き込まれているのか、それともそれも御津島の趣向なのか?

どこまでが仕組まれていて、本当は何が起きているのかに翻弄されながらぜひ館ミステリーに挑んでいただきたいです。

本編のクライマックスやエピローグでこれまでの伏線が一気に回収される流れやクローズドサークルならではの緊迫感は、かなり秀逸なのですが、動機づけや各人物の行動原理が腑に落ちないところもあり、やや惜しいなとも感じましたが、ミステリーとして最後まで十分楽しめる作品でした。

 

こんな人にオススメ

 

・王道ミステリーが好き
・推理ものが好き
・どんでん返しが好き

登場人物も少なく、限られた密室の中で、犯人や行動原理、動機などを推理しながら読むことができます。

実際の邸宅を舞台にしたクローズドサークル・ミステリー。

その謎は現実か虚構か?

待ち受ける真実をあなたは見抜けるか?

『そして誰かがいなくなる』ぜひ読んでみてください。