突然ですがみなさん、小説を選ぶときどんなことを考えますか?
私は、ズバリ最後の文章が目に入らないように何ページあるのかを確認します。
単純に長すぎる小説だと読み疲れてしまうからです。
本日は1編約50ページのミステリー短編集、水生大海氏著作『最後のページをめくるまで』を紹介しようと思います。
当ブログでは、なるべくネタバレしないようにあらすじ・感想を書いております。
内容説明
ミステリー5編からなる短編集です。内容はそれぞれ独立しており、順不同に読んでも問題ありません。
全ての章で、ラストにしっかり伏線回収があるので冒頭からじっくり読み進めることをおすすめします。
第一章 使い勝手のいい女
ホームセンターアルバイト勤務の長尾葉月の元に次々と不穏な来客者が現れる。
元彼の智哉。友人であり智哉を奪った加奈。さらには警察まで、、
使い勝手のいい包丁とは、よく切れて手入れが楽なものだろう。
1ヶ月ぶりに包丁を研ぐ葉月。なぜ彼女は包丁を研ぐのか、、
第二章 骨になったら
妻を亡くした花沢公人。葬儀場に参列する彼は、早く妻が火葬され骨になることを祈っていた。
なぜ公人は早く妻が骨になって欲しいのか、彼が抱える謎とは、、
第三章 わずかばかりの犠牲
先輩の誘いで詐欺の受け子をさせられていた大学生・諒は公園で笠井と名乗る老人と親しくなる。
ある日、笠井が詐欺被害に遭いそうになっているところを間一髪で止める諒。
だが、そのことがきっかけでトラブルに巻き込まれてしまう、、
第四章 監督不行き届き
キャリアウーマンの加藤満智のもとに城田と名乗る女性が現れる。
なんと、城田は満智の夫・佑典の不倫相手だった。
高校生の息子や自宅のローンもあり、離婚するつもりはないと考える満智。
程なくして、佑典が失踪してしまい、、
第五章 復讐は神に任せよ
息子を轢き逃げで亡くした新里夏帆は、轢き逃げ犯への復讐のタイミングを図っていた。
そんな中、夏帆はマンションの隣人である須田光恵と話すようになる。
復讐は巡り巡ってあらぬ方向へ展開する。果たして、その待ち受ける結末とは、、
感想
タイトルに偽りなく、最後まで油断のできない濃厚なミステリー短編集。
これが読んでみて最初に抱いた感想です。
特に、ミスリードと伏線が秀逸で謎や不自然な言い回しを散りばめつつ、目隠しをされた状態でオチに辿り着き、伏線の回収がピタッとはまり驚かされます。
序盤に出てきた人物が重要な役割をになっているかと思いきや、終盤の展開に入り込まず、いい意味で肩透かしを食らったりととにかく押し引きが巧く、作者の術中にのめり込んでしまいました。
個人的に1つ挙げるなら「監督不行き届き」が好きです。
タイトルの意味がわかった時のゾワっと感がたまりませんでした。
こんな人にオススメ
・ミステリー初心者
・簡単には騙されない
・読みやすい小説が好き
1章あたり約50ページの短編集でサクサク読めるのですが、各章が濃密な仕上がりになっているため、個人的には長編ミステリー5本といっても過言ではないと思っています。
そのぐらい要所に伏線や謎が散りばめられ、それらが回収される最後の展開が綺麗に決まっています。
展開の巧さと美しさを兼ね備えた至高のクオリティーだと感じました。
初心者はもちろん、ミステリー好きにもたまらない作品となっているのでぜひ読んでみてください。