今回は著名なファンタジー作家で全国の書店員からの絶賛の声が止まない、多崎礼氏のファンタジー作品、『レーエンデ国物語』を紹介いたします。
多崎礼氏は、2006年『煌夜祭』で第2回C★NOVELS大賞を受賞しデビュー。
著書に「〈本の姫〉は謳う」、「血と霧」シリーズなどがあります。
当ブログでは、なるべくネタバレの無いようあらすじ・感想を書いております。
あらすじ
異なる世界、西ディコンセ大陸の聖イジョルニ帝国。家に縛られてきた貴族の娘・ユリアは、英雄の父・ヘクトルと共に冒険の旅に出る。
呪われた地・レーエンデで出会ったのは、琥珀の瞳を持つ寡黙な射手・トリスタン。
空を舞う泡虫、琥珀色に天へ伸びる古代樹、湖に建つ孤島城。ユリアはレーエンデに魅了され、森の民と暮らし始める。
はじめての友達をつくり、はじめて仕事をし、はじめての恋を経て、親族の駒でしかなかったユリアは、やがて帰るべき場所を得た。
時を同じくして、建国の始祖の予言書が争乱を引き起こす。レーエンデを守るため、ユリアは帝国の存立を揺るがす戦いの渦中へと足を踏み入れる。
感想
本格ファンタジーとあって、とにかくその世界観に魅了されてしまいました。
まるで、この物語のヒロインであるユリアとともにレーエンデを旅することができたような、不思議な読書体験でした。
レーエンデ地方の人々の温度をすぐ隣で感じることができましたし、終わりが近くなるにつれて、ページを捲る手は加速していき、終わってほしくない、永遠に物語を感じていたいと思いました。
ユリアとトリスタンの二人の関係性は、特殊そのもの。
読者に想像させるような、その後の展開を委ねるようなもの。
ハッピーエンドとはいえないかもしれないですが、バッドエンドともいえない不思議な感覚。
物語自体は二人の関係にのみスポットライトが当てられている訳ではなく、繰り返される二人の心情描写が、彼らの間で直接的な言葉で表現される場面が少ないのが読者の想像力を掻き立てます。
ファンタジー小説にはよく出てくる“不治の病”の設定も物語の根幹に繋がるように綺麗に落とし込まれていていました。
特定の地方に根付く、解明が進んでいない病というものは珍しいものではありません。
ファンタジー小説を描く上では取り入れられやすい設定の一つだと思います。
「原因不明」と言葉では簡単ですが、物語に落とし込むのであれば背景は大切にする必要があり、そのあたりレーエンデの病である銀呪病は綻びがなく、病に対しての外地からきた人間の理解度だけではなく、地方や民族特有の文化や言い伝えも丁寧に結びつけがされていました。
ヒロインであるユリアの父・ヘクトルという人物の行動理念にも結びつくこの病が、作中で物凄く大きく取り上げられるわけではないですが、要所で必ず物語のすぐ側にいるのがわかりものすごく良かったです。
物語の最終盤では、旅の記録として文章構成を感じることができ、ああ、この物語は序章にすぎず、まだまだ続いていくのだなと感じることができます。
レーエンデがどのような道を歩いていくのかを示唆して物語は結末を迎え、長い長い序章が終焉を迎えます。
現在『レーエンデ国物語』は第三部までが出版されていて、今後四部、五部と続いていく構想が練られており、今後全てが出揃ってレーエンデの旅が完成するときがとても楽しみです。
『レーエンデ国物語』は、ファンタジー小説としてとても高い完成度を持っている小説であると共に、だれもが旅の主人公として感情移入できる作品だと感じました。
こんな人にオススメ
・「自分の人生を生きる」本当の意味を知りたい
・涙を流すほどの友情と愛情の物語が好き
・ファンタジーが好き
愛と絆の本格ファンタジーの第一章。
約500ページにもわたるボリュームですが、中弛みも無く、ファンタジー好きにはたまらない作品だと思います。
『レーエンデ国物語』ぜひ読んでみてください。