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ミステリー

『密室法典』五十嵐律人 個性派バディが難題に挑む!!

 

今回紹介するのは、古城と戸賀の個性派バディが謎を解く『六法推理』の続編、『密室法典』です

著者の五十嵐律人さんは、1990年岩手県生まれ。

東北大学法学部卒業。弁護士(ベリーベスト法律事務所、第一東京弁護士会)。

『法廷遊戯』で第62回メフィスト賞を受賞し、デビュー。

著作に、『不可逆少年』『原因において自由な物語』『六法推理』『幻告』『魔女の原罪』『真夜中法律事務所』、実用書として『現役弁護士作家がネコと解説にゃんこ刑法』も刊行しています。

『不可逆少年』の紹介記事のリンクはこちらをクリック。

『魔女の原罪』の紹介記事のリンクはこちらをクリック。

『真夜中法律事務所』の紹介記事のリンクはこちらをクリック。

当ブログでは、なるべくネタバレの無いよう、あらすじ・感想を書いております。

 

あらすじ

 

霞山大学の法学部から、同大学のロースクールへと無事に進学した古城行成。

古城が運営する「無料法律相談所」(通称「無法律」)は、自称助手の経済学部四年・戸賀夏倫と、法学部四年・矢野綾芽を交え、持ち込まれた法律が関わる事件を解決する自主ゼミである。

密室状況にある模擬法廷の証言台の前で、恐竜の着ぐるみが倒れていた監禁事件、2通の遺言書を作成した医者の不審死とダイイングメッセージの謎、官庁訪問の会場で相談された雪山での遭難事件などの経験を通じて、古城たちは少しずつ、法の真理と人間への洞察を深めていく。

 

 

内容紹介(ネタバレなし)

密室法典

ロースクールの講義中、模擬法廷の証言台の前で恐竜の着ぐるみが倒れているのを発見する。

着ぐるみの中にいたのは同級生の村瀬伊織。

幸い、一命は取り留めるも密室状況の中。一体誰がこんな事件を起こしたのか、、

古城と戸賀、そして法学部四年の矢野綾芽が不可解な謎に挑む。

今際言伝

村瀬伊織は古城にある相談を持ちかける。

形成外科を営んできた祖父の遺言についてだった。

村瀬の父親も美容クリニックを営んでおり、遺書の内容は相続に関するもの。

伊織と伊織の父親、それぞれを相続人とする旨が書かれた2通の遺書が見つかったのだった。

どちらの遺書が有効で、どちらが相続人となるのか、、

そして、不可解な謎がもう一つあり、、

閉鎖官庁

法学部4年の矢野綾芽は就職活動で官庁を訪問していた。

就活中に出会ったのは、高校時代の同級生、澄野卓。

綾芽は澄野から法律相談を持ちかけられる。

なんと、澄野の父親が雪山で遭難し、後日、母親が父親の死体遺棄で逮捕されたというものだった。

解決のため、奔走する綾芽だったが、事態はあらぬ方向へ向かっていき、、

 

毒入生誕祭

かりんとルナは同じコンカフェで働いている。

コンカフェのキャスト・ノエルの生誕祭に客として訪れた・宗雄。

彼がシャンパングラスを口にした途端、突然苦しみ出して嘔吐した。

一命は取り留めたが、宗雄は漂白剤を口にしてしまったと後日わかった。

いったい、誰がどうやって、彼一人に漂白剤を飲ませたのか、、

 

感想

 

リーガルミステリ史上に残る個性的なバディ、再び。

『六法推理』に続く<無法律>シリーズの第二短編集です。

<無法律>とは霞山大学法学部の自主ゼミ「無料法律相談所」の通称で、本シリーズの主人公は<無法律>に所属する古城行成と戸賀夏倫です。

法学部に所属する古城は法曹一家に生まれたエリートで、無料の法律相談を行っています。

経済学部に通う戸賀は常に派手なファッションを着て、いわゆるギャルのような雰囲気をまとっていますが、人並外れた洞察力の持ち主で、<無法律>に持ち込まれる事件に対し、鮮やかな推理を披露します。

古城と戸賀の掛け合いを通じてリーガル小説と本格謎解き小説の融合を試みているのが<無法律>シリーズの特徴であると同時に、正反対な特徴を持つ人物が力を合わせて難題に取り組む相棒小説としての側面も持ち合わせています。

シリーズ第2弾である本書で古城は霞山大学のロースクールへと進学していますが、その模擬法廷で起こった不可解な事件を描いているのが表題作の「密室法典」です。

同作では密室の謎が描かれており、これが『密室法典』という連作短編集の特徴ともいえます。

本格謎解き小説でお馴染みの趣向を法律の世界に絡ませた時にどのような物語を紡ぐことが可能なのか、ということに作者は挑戦しています。

その意気込みが最も洗練された形で表れているのが二編目の「今際言伝」です。

ダイイングメッセージというミステリーさながらの要素と、遺書や相続というリーガル要素を掛け合わせた時の、謎が一風変わったものになるところに感心しました。

三編目の「閉鎖官庁」は<無法律>の三人目のメンバー、法学部四年の矢野綾芽が官庁の就活中に再会した旧友から聞いた謎に挑む話ですが、矢野が挑む謎解きとは別の部分にちょっとしたサプライズが用意されていると同時に、一人の若者が痛みを伴いながら成長する青春小説としての佇まいも備えた作品となっています。

最後の「毒入生誕祭」は、ミステリ読者には馴染みの深い“毒殺もの”の変形というべき謎が示されています。

五十嵐律人さんの作品としては珍しい手法のハウダニット小説として堪能できるのですが、それだけに留まらない仕掛けも用意されており、驚きました。

『密室法典』では本格謎解きミステリ四編がしっかりと組まれており、リーガルミステリの旗手から、更に多種多様なミステリの書き手への飛躍を感じさせる一冊でした。

 

こんな人にオススメ

 

・五十嵐律人さんの作品が好き
・『六法推理』を読んだことがある
・リーガルミステリーが好き

『六法推理』を読んでいなくても、話は通じる部分はありますが、心から楽しむためには読んでおくことをお勧めします。

短編四編と読みやすく、法律を絡めた謎解きミステリーとなっています。

『密室法典』ぜひ、読んでみてください。