今回紹介するのは知念実希人さん著作『真夜中のマリオネット』です。
知念実希人さんは1978年沖縄県生まれ。東京慈恵会医科大学卒、日本内科学会認定医。
他の作品としては『仮面病棟』『硝子の塔の殺人』などがあり、気になる作品が多かったのですが、あまり読んだことがなく、今回読むのは2024年の本屋大賞ノミネート作『放課後ミステリクラブ』以来、2作目となります。
『放課後ミステリクラブ』の紹介記事のリンクはこちらをクリック。
当ブログでは、なるべくネタバレの無いよう、あらすじ・感想を書いております。
あらすじ
一晩かけて遺体をバラバラにする猟奇殺人鬼
「真夜中の解体魔」に婚約者を殺された救急医の秋穂は、傷心のまま職場に復帰する。
そこにバイク事故で重傷を負った美しい少年・涼介が搬送されるが、彼こそが「真夜中の解体魔」だと刑事から聞き、復讐を決意。
対して、涼介は潤んだ目で冤罪を訴え・・・・・・。
果たして彼は無垢な天使か、残忍な悪魔か。
ラスト1頁、必ず絶叫する!
衝撃のクライムサスペンス。
主な登場人物
小松秋穂 31歳救急医。研修医時代の指導医であり婚約者の一輝を「真夜中の解体魔」に殺される。警察から搬送されてきた患者こそ「真夜中の解体魔」だと告げられ、自らの手で復讐しようと試みるが、患者本人の冤罪の訴えと医師としての信念から、それが叶わず、本当に彼が「真夜中の解体魔」なのか調べることに。
石田涼介 秋穂の勤める救急病院に搬送されてきた美少年。警殺害現場に出会したところから「真夜中の解体魔」として疑いがかけられるが、本人は冤罪を訴え続けている。
矢内 秋穂の上司であり、救急医部長。
美濃部 「真夜中の解体魔」を追う刑事。
倉敷 美濃部の相棒。立場は美濃部の下。石田涼介の生い立ちから現在に至るまでを知っており、石田の更生を望んでいたが叶わず、美濃部と共に彼を「真夜中の解体魔」だと確信の下、捜査を行なっている。
桐生 事件記者であり、元探偵。警察とも繋がりがあるようで「真夜中の解体魔」を追うため秋穂の前に現れる。
感想
やられました、、
この一言に尽きます。
タイトルにもマリオネットとありますが、作中にも操り人形、蝋人形などマリオネットを示唆する言葉がところどころ出てきます。
果たしてそれは秋穂なのか、涼介なのか、はたまた別の誰かなのか。
無実を訴え続ける美しい少年とそれに翻弄される秋穂や刑事たち。
そして、我々読者。
ところどころで怪しい人物や腑に落ちない点がありますが、払拭できないまま迎えるクライマックス。
犯人が明らかになり、訪れるもうひと展開。
そこで全てが腑に落ちます。
マリオネットは一体誰だったのか。
圧巻だったのは「真夜中の解体魔」の疑いがかけられている涼介の人心掌握術。
婚約者を殺され、復讐の念を燃やし、その気になれば医師の立場を生かし自ら手にかけることもできた秋穂やベテランの強面刑事ですら、手玉にとってしまいます。
人を信じるという善良な人間性が強いほど騙され、タイトルどおりマリオネットにされてしまいます。
しかしながら、人の内面の善良さは信じることしかできません。
なんせ証明など不可能なのですから。
「真夜中の解体魔」への復讐を誓ったはずの秋穂は、疑念を抱きながらも徐々に絆され、肩入れし、いつの間にか「私にしか助けられない」という特別感に依存してしまい、少しずつ懐柔されてしまいます。
その狂気的ともいえる心の移り変わりは共感してしまうものでした。
果たしてその美しい少年は何者かに操られているのか、それとも我々が操られているのか、、
少しずつ明らかになる真実と、その後に訪れる衝撃の結末から目が離せませんでした。
こんな人にオススメ
・家族、友人、恋人など大切な人がいる
・事件の犯人などを推理するのが好き
・サイコパス、猟奇的な描写が好き
医療現場ならではの専門用語が出てきますが、わかりやすく説明がありますので読みやすいと思います。
残虐的な描写もありますので、苦手な方にはオススメできません。
タイトルの意味と、一体誰が操り人形だったのか。
ぜひ、自分の目で確かめてみてください。