社会人になりお金について考える機会が増えてきました。給料や税金、保険など最近は高校でも投資について授業が行われるとか。
私ももっと早くお金のことについて考えればよかったと感じています。
早くからお金のことについて学んで金融リテラシーを高めることは、日本の未来のためにも必要なことだと思います。
今回はお金に狂わされた少女について描いた小説・川上未映子氏著作「黄色い家」を紹介していこうと思います。それでは、早速本編へいきましょう。
当ブログでは、なるべくネタバレしないようにあらすじ・感想を書いております。
あらすじ
約20年前に一緒に暮らしていた黄美子が、女性を監禁したとして罪に問われたというニュースをみた花は、当時の記憶を思い出していた。
15歳の夏、スナックを転々とするシングルマザーと暮らす花であったが、しだいにその生活に息苦しさを覚え、あることがきっかけで緊張の糸が切れてしまう。憂鬱に浸る中、救い出してくれたのは黄美子であった。
17歳の時に家を出て、黄美子と一緒にスナック「れもん」を開店する。黄美子の友人である映水や琴美らの支えもあり、お店は軌道に乗り始める。
「れもん」の近くでホステスをやっていた蘭、客としてやって来た女子高生の桃子らも一緒に働き始め、4人は一緒に暮らすことになる。
そんな少女たちの奇妙ともいえる共同生活はあることをきっかけに崩れ始める、、、
主要な登場人物
・花 〜 本作の主人公。黄美子とともにスナック「れもん」を開店する。
・黄美子 〜 花の母の友達。花とともに「れもん」を開店する。約20年後に別の同居女性の監禁の罪に問われてしまう。
・蘭 〜 「れもん」の近くでホステスとして働いていたが、花の誘いで「れもん」で働き始める。花の友達。
・桃子 〜 「れもん」に客としてやって来た女子高生。花の誘いで「れもん」で働き始める。花の友達。
・映水(ヨンス)〜 黄美子の友人
・琴美 〜 黄美子の友人
感想
モノクロで息苦しい生活から、光り輝く人生への第一歩のきっかけをくれた、いわば恩人である黄美子との出会い、幸も不幸も全てはここから始まります。
「れもん」はうまくいき、友達もでき、初めはキラキラ希望に満ち溢れた人生を送り始めたところでした。
学歴も自分で稼ぎ生きていく術も持たない10代の少女たちの奇妙な共同生活。楽しいことも辛いこともみんなで支え合って、乗り越えていこう。
その生活も不幸が重なり、しだいに崩れていきます。
みんなの家を守りたい。自分の居場所を取り戻したい。
主人公の花が金に狂わされ、堕ちていく様が丁寧に描かれていて終盤での狂気には恐怖を感じました。
その終焉は、私たちはやらされていただけ。
判断力の乏しい10代の少女たちが、育った環境や周囲の大人たちによって悪い方に流されてしまい、それを正してくれる人間もおらず、ただただ気の毒でした。
恩人であり、心の拠り所であった黄美子と花の関係性の変化も丁寧に描かれており、難しいことは理解できないけど、不幸な境遇の女の子や孤独を感じている女の子たちの感情に深く共感して寄り添おうとする。そんな黄美子の行動には一貫したものがあったように感じます。
ただ、黄美子でも花の暴走は止めることはできず、花たちに向けたような同情や共感が、約20年後に別の女性への監禁の罪に問われてしまうことを思うと、私自身は黄美子の行動には共感はできませんが、なんとなく後味の悪さを感じてしまいますね。
こんな人にオススメ
・長編小説が苦ではない
・人間の狂気が見たい
・お金の正体について考えている
本作は600ページ超の長編小説になっております。会話が多く、物語の展開も早く、かつ、心理描写も丁寧なので飽きることなく読むことができると思います。花がお金に狂わされ、堕ちていく様や周囲の大人達の勝手さ、無力さは特に注目してほしいです。
黄色とは風水ではお金、金運を意味します。
作中でも風水で黄色い物を扱う描写があり、だから、黄色い家というタイトルなのかなと思いましたが、読み終えたとき、私は別の意味なのだと考察しました。気になる方はぜひ読んでみてください。
この作品を読み終えた時、感じたものや広がる世界観をぜひ共有したいですね。