みなさん『汝、星のごとく』は読みましたか?
凪良ゆうさん著作で昨年の本屋大賞受賞作として話題になりました。
今回紹介するのは、その続編である『星を編む』です。
風光明媚な瀬戸内を舞台にした愛の物語が再び帰ってきました。
早速、本編にいきましょう。
著者の凪良ゆうさんは、京都市在住。2007年に初著書が刊行され本格的にデビュー。
19年に『流浪の月』と『わたしの美しい庭』を刊行。
20年『流浪の月』で本屋大賞を受賞。同作は22年5月に実写映画が公開されました。
2022年に刊行した『汝、星のごとく』は、第168回直木賞候補、第44回吉川英治文学新人賞候補、2022王様のブランチBOOK大賞、キノベス!2023第1位、第10回高校生直木賞、そして23年、2度目となる本屋大賞受賞作となりました。
当ブログでも『汝、星のごとく』について紹介しております。紹介記事のリンクはこちらをクリック。
当ブログでは、なるべくネタバレの無いようにあらすじ・感想を書いております。
あらすじ(帯表紙より)
春に翔ぶ
瀬戸内の島で出会った櫂と海。二人を支える教師・北原が秘めた過去。
彼が病院で話しかけられた教え子の菜々が抱えていた問題とは?
星を編む
才能という名の星を輝かせるために、魂を燃やす編集者たちの物語。
漫画原作者・作家となった櫂を担当した編集者二人が繋いだもの。
波を渡る
花火のように煌めく時間を経て、愛の果てにも暁海の人生は続いていく。
『汝、星のごとく」の先に描かれる、繋がる未来と新たな愛の形。
感想
第1部「春に翔ぶ」では、櫂と暁海を導いてくれた恩師・北原先生の過去について明かされています。
北原先生については『汝、星のごとく』では触れられている部分が少なく、謎の多い人物設定だったので、ここで明かされて納得できるところがありました。
壮絶な過去を経験しており、それがしっかりと櫂と暁海への教えに生かされていましたね。
誰もが誰かを思い、悪気なく身勝手で、なにかが決定的にすれちがってしまう。このどうしようもない構図はなんだろう。これもまた愛の形だと言うのなら、どう愛そうと完璧にはなれないのなら、もうみな開き直って好きに生きればいいのだ。そうして犯した失敗なら納得できるだろう。(「春に翔ぶ」より引用)
一般常識的に正しくないことを肯定するわけではなく、ただ、家族や恋人、夫婦、その愛の形はそれぞれにあって、どこかそれを許してしまえる優しさが作品の中に散りばめられており、愛というものが正しさや常識を浄化してくれる。そんな印象を受けました。
第2部の「星を編む」では櫂を支え、永遠の星となった若き二人の夢を紡いだ編集者の物語、そして、第3部の「海を渡る」は櫂が亡き後、夫婦となった暁海と北原先生のその後の人生の物語と続いていきます。
ネタバレになるので詳しくは書けませんが、この二つの物語は対照的な描かれ方をしていると感じました。
夫婦になれば、生活や価値観、考え方の変化を余儀なくされるでしょう。円滑な夫婦生活を営みたいなら、自分の考えを押し通すなんてことはまずあり得ないと思っていた方がいいです。
時には回り道をしながら後戻りをしながら寄り添って歩けたら理想といえるでしょう。
しかし、人生とは選択の連続であり、人は変化し続ける生き物です。一つの選択をすれば他方を選択しないということ、それぞれに訪れる未来があり、それが不明瞭だから選択を恐れるわけです。
自分だけが変わらず、相手にだけ変化を押し付けるのはあり得ませんし、逆も然りです。
お互いがお互いを思いやり、その都度立ち止まって最善の選択ができる。そんな夫婦が理想と言えるのかもしれませんね。
暁海と北原先生。初めは恋愛感情はなく、お互いを助け合うという形で始まった夫婦生活でした。
暁海には櫂という亡き想い人がいたにもかかわらず、それも含め愛した北原先生。
二人の人生は澱みながら足掻きながら歪みながら、決して正しくも美しくもなかったかもしれません。
愛の形はそれぞれにあり、その形を変えながらもまっすぐに自分の人生を歩み続けた暁海と北原先生。
そして、二人の中にあり続けた櫂。
この物語は純愛を描いた作品であり、自分の人生を生きる覚悟も描いた作品だと感じました。
こんな人にオススメ
・自分の人生を生きられない人
・親や周囲の目を気にしてしまう人
・『汝、星のごとく』に感銘を受けた人
『汝、星のごとく』の続編と謳われており、脇を固めていた登場人物を主としたスピンオフ作品とも言えるので、『汝、星のごとく』を先に読んでおくことをオススメします。
ただ、北原先生の過去を知った上で、『汝、星のごとく』を読んだらどうなったんだろうと少し感じる部分はあります。
『星を編む』ぜひ、読んでみてください。