田舎暮らしの30代看護師
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ミステリー

『逆転正義』下村敦史 どんでん返しの短編集

 

正義感の強い人は魅力的に写りますよね。

逞しさや自分の信念を貫き通す心だったり、頼もしさを感じることがほとんどだと思います。

しかし、人によっては押し付けがましさを感じたり、正しさに疑問を抱くこともあるかもしれません。

正しさには明確な物差しが存在せず、曖昧なものです。

では、誰が正しさと不正を決めるのか。

神様でも仏様でもなく、それもまた人なのです。

本日はどんでん返しの短編集・下村敦史氏著作「逆転正義」について紹介していきます。

下村敦史氏は1981年京都府生まれ。

2014年「闇に香る嘘」で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。数々のミステリランキングで高評価を受けます。

15年「死は朝、羽ばたく」が日本推理作家協会賞(短編部門)、16年「生還者」が日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)の候補になります。

「真実の檻」「サハラの薔薇」「黙過」「同姓同名」「ヴィクトリア・ホテル」「そして誰かがいなくなる」など著作が多数あります。

当ブログでは、「そして誰かがいなくなる」も紹介しております。
紹介記事のリンクはこちらをクリック。

 

また、当ブログでは、なるべくネタバレの無いようにあらすじ・感想を書いております。

 

内容説明(ネタバレなし)

 

ミステリー6編からなる短編集です。内容はそれぞれ独立しており、順不同に読んでも差し支えありません。

全ての章で、ラストにしっかり伏線回収があるので冒頭からじっくり読み進めることをおすすめします。

 

見て見ぬふり

 

教室のいじめ。僕は見て見ぬふりなんてできない!

松木冬樹は高校生。

クラスでは幼稚ないじめが行われている。

関わりたくない。ーーーでも。

良かれと思って担任に報告に行ったが、放課後教室で「チクっただろ」と囲まれて、、

 

保護

 

コンビニの前で佇む制服姿の彼女。彼女を一人にはできない!

早川満雄は、ある雨の日、仕事帰りに寄ったコンビニで傘がないのか軒下にいつまでも立ち続ける彼女に出会った。

満雄はたまらず声をかけるが、、

 

完黙

 

麻薬の売人。

麻薬取締官に口を割るわけにはいかない!

大重泰三は雑居ビルの狭間に今日も一人立っていた。

買う奴がいるから売る。中年、大学生、高校生、、

いろんな人間が薬を求めてやってくる、、

 

ストーカー

 

人を殺めたトイレに男を入れてはいけない!

血みどろの手を洗っているときに、彼が部屋にやって来た。

殺したことがバレる前に、追い返さなければならない、、

 

罪の相続

 

罪のない俺の息子が殺されたなんて許せない!

子供をなくした父親が何者かに襲われた。

一体、何が起こったというのだ。

手足を縛られ、廃工場で途方に暮れた、、

 

死は朝、羽ばたく

 

刑務所から出たら普通の生活に戻っていいのか!

札幌刑務所から出てきた男が、建物に向かって一礼した。

人を殺した罪を胸に抱えて、、

 

感想

 

タイトルに偽りなく、最後の最後で物語が反転してしまう濃厚なミステリー短編集。
これが読んでみて最初に抱いた感想です。

特に、ミスリードと伏線が秀逸で謎や不自然な言い回しを散りばめつつ、目隠しをされた状態でオチに辿り着き、伏線の回収がピタッとはまり驚かされます。

第一章の「見て見ぬふり」では序章に相応しく、学校のいじめ問題という身近で入り込みやすい内容設定になっていますが、物語は思わぬ方向に進んでいきます。

ツイッターで古島たちを叩いているのは赤の他人だし、部外者だし、第三者だ。自分たちが正しいと思う理由さえあれば、誰かをどんなに攻撃したり罵倒しても、いいってこと?

いじめでも差別でも、みんな、間違っているって思いながらしてる人間はほとんどいないんだよ。自分は正しいことをしてる、って本気で思い込んでいる。で、その正しさを疑おうとはしない、絶対に。なぜなら、その正しさとは無条件で正しいことだから。(「見て見ぬふり」より引用)

自分の知っていること、見えている世界が真実とは限らず、真実もわからないのに正義を振りかざすことの恐ろしさを問われているようでゾクゾクしました。

第一章からお腹いっぱいになりました。まさに金槌で頭を叩かれたかのような感覚です。

これがあと5回も続くのかと思うとワクワクが止まりませんでした。

 

こんな人にオススメ

 

・ミステリー初心者
・どんでん返しが好き
正義感が強く、不正を放っておけない

あなたの持つ正しさは、相手にとっても正しいことだと思いますか?

こう問われたら皆さんなら何と答えますか?

こちらから見えている世界だけで物事を進めていいのか、それは果たして正しいことなのか、見えている角度を変えてみるとどう見えるのか。

考えるきっかけになる思います。

個人的には「見て見ぬふり」「保護」「死は朝、羽ばたく」が見応えがありました。

ぜひ読んで体験して見てください。驚きと気づきを与えてくれるはずです。

下村敦史氏著作『逆転正義』オススメです。