田舎暮らしの30代看護師
自己満
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ミステリー

『あの日の交換日記』辻堂ゆめ

 

みなさんは、交換日記はやったことありますか?

小学生時代にちょっとだけやったことがある方もいるかもしれません。

今は、便利な世の中になり、手書きの文章で相手に何かを伝えることが減りつつありますよね。

私は手紙を書いたことはありますが、交換日記はありません。

手紙を書いた経験もそこまで多くはありませんが、手書きの良さって少なからず存在すると思います。

メールを打ったり、言葉で相手に伝えたりすることでは表せない気持ちがふと、湧き上がってくることとか。

相手のことを考えながら書いているうちに頭の中が整理されて、書く前には思ってなかった感情が込み上げてきたり、逆に、思っていたことが消失したり。

人間関係でギクシャクしたり、悩んだりしている方は、時には手書きの文章で相手に伝えるという手段もありかもしれません。

今回紹介するのは『あの日の交換日記』です。

著者の辻堂ゆめさんは、1992年神奈川県生まれ。東京大学卒。

第13回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞し『いなくなった私へ』でデビュー。

『トリカゴ』で第24回大藪春彦賞受賞。

他の著作に『山ぎは少し明かりて』『十の輪をくぐる』『僕と彼女の左手』『二人目の私が夜歩く』などがあります。

『二人目の私が夜歩く』の紹介記事のリンクはこちらをクリック。

当ブログでは、なるべくネタバレの無いよう、あらすじ・感想を書いております。

 

あらすじ

 

交換日記、全部読みました。

そして、思い出しました。

嘘、殺人予告、そして告白、、、

大切な人のため綴られた日記に秘められた真実とは?

気鋭に若手ミステリ作家が綴るのは、驚くべき仕掛けとその後おとずれる感動。

 

内容紹介(ネタバレなし)

交かん日記をする時のお約束

  • 読みやすい字で、ていねいに書きましょう。
  • ほかの人の悪口は書かないようにしましょう。
  • 何を書くかは自由です。その日あったことや最近思ったこと、自分で作ったお話でもかまいません。
  • なやみを打ち明けられたら、優しく相談に乗りましょう。
  • 相手がどんなことを書いたとしても、せめたりおこったりしてはいけません。
  • 交かん日記をやめたくなったら、きちんと相手に言いましよう。
  • 使い終わったノートをどうするかは、話し合って決めましよう。

 

第一話 入院患者と見舞客

入院中の女の子が先生を相手に…

学校では今なにが流行っているのかな。

第二話 教師と児童

先生、聞いて。私は人殺しになります。

お願いだから、じゃましないでね?

第三話 姉と妹

一卵性双生児の姉妹と…

すごく迷わくなんだよね。ふた子に足引っ張られるのって。

第四話 母と息子

自閉スペクトラムの息子と…

小さい女の子とぶつかった。

女の子がなきました。

うるさかった。

第五話 加害者と被害者

交通事故の相手と…

肩の力を抜いて、ですか。

難しいですが、頑張ってみようと思います。

第六話 上司と部下

日々の業務日報のコメント欄を使って…

私は彼女に合わせる顔がありません。

毎日不安でいっぱいです。

第七話 夫と妻

交換日記を始めるにあたって、一つだけ、お願いごとがあります。

このノートの中でだけ、今まで話してこなかったようなことを振り返ってみる。

それって、なんだか素敵じゃないですか。

 

感想

 

ほっこり系かと思いきや、どんでん返しや伏線回収、叙述トリックなどミステリー感があり、時系列や関係性が繋がったとき、感動とすっきり感が味わえました。

ある女教師の手記から始まり、その人物は一体誰なのか。

この物語の真髄とも言えると思います。

交換日記と聞くと懐かしいタイトルの短編ですが、7編全てが交換日記形式となってます。

先生と生徒だったり、友達同士、親と息子、上司と部下、夫婦など様々。

各話にきちんとオチがあり、最後の第七話で全てが繋がります。

ストーリーに驚きがありつつも、メインの話はとても温もりがあって、人と人との繋がりに優しさを感じました。

手書きの文章で気持ちを伝えるという機会の少なくなったこの時代だからこその人の気持ちが詰まった物語なのだと思います。

本書にも書かれていましたが、文章って不思議ですよね。本心を隠すことも、さらけ出すこともでき、相手を癒す薬にもなれば、心臓をえぐるナイフにもなります。

ですが、手書きの文章の中には、相手への愛が絶対的に存在し、書き記す行為その時間だけは本物だということ。

本音って対面で言うのは難しいですし、日記にも書けそうで書けなくて、そのもどかしさをこの本が本の中で解決してくれます。

この小説は読んでてミステリー臭がしないのに、しっかりと期待を裏切ってくれた展開と伏線回収の素晴らしさ。

それぞれの人間模様の中にある温かさと切なさ、読者を飽きさせない仕掛け。

すべてを読み終えた時に、今まで感じたことのない温もりと爽快な読了感を味わうことができました。

 

こんな人にオススメ

 

・文章を書くことが苦手
・人間関係に悩むことが多い
・対面で本音を伝えることが苦手

『交換日記』という形で綴られた7篇の人間模様。

どのお話も優しさと切なさとミステリが込められていて、読み終えた後にスッと浮かび上がる情景の心地よさに浸りました。

繋がりを持たせた連作短編。

見事な叙述トリックを楽め、前のページを何度も読み返すこと必至の一冊です。

『あの日の交換日記』ぜひ読んでみてください。