今回紹介するのは五十嵐律人さん著作『嘘か真言か』です
著者の五十嵐律人さんは、1990年岩手県生まれ。
東北大学法学部卒業、同大学法科大学院修了。
弁護士(ベリーベスト法律事務所、第一東京弁護士会)。
『法廷遊戯』で第62回メフィスト賞を受賞しデビュー。
他の著書に、『不可逆少年』『魔女の原罪』『密室法典』『真夜中法律事務所』があります。
『不可逆少年』の紹介記事のリンクはこちらをクリック。
『魔女の原罪』の紹介記事のリンクはこちらをクリック。
『密室法典』の紹介記事のリンクはこちらをクリック。
『真夜中法律事務所』の紹介記事のリンクはこちらをクリック。
当ブログでは、なるべくネタバレの無いよう、あらすじ・感想を書いております。
あらすじ
日向由衣は裁判官に任官して三年目。
念願がかなって志波地方裁判所の刑事部に配属された。
赴任した由衣は、上司となる阿古部長から一つの課題を出されていた。
「紀伊真言が嘘を見抜けるか見抜け」
赴任したばかりの判事補には仕事がない。
それならば紀伊の裁判を傍聴して部長の“課題、に答えるしかない。
かくして由衣は紀伊が訴訟指揮をする、窃盗事件の第一回公判に臨む。
内容紹介(ネタバレなし)
嘘か真言か
被告人・井田遼子はリサイクルショップから指輪を持ち去った容疑で裁判にかけられていた。
井田は容疑を認めており、証拠も揃っている。
公判を担当する紀伊は被告人質問をするが、意図が分からない質問が続き、突然裁判を休廷させる、、
喰うか騙るか
特殊詐欺グループの受け子が送検されてきた。
自身が詐欺に関わっていたことに気づかなかったという。
詐欺グループの幹部を調べているうち、あるつながりが見えてきて、、
一か罰か
ある女性が被害に遭った事件。
大麻、殺人、死体損壊、そして特殊詐欺。
いろんな事件が絡み合う中、ある少年が関わっていた。
しかし、その少年にはなんと戸籍がない。
夢か現実か
ライターの相川梨子は著作権侵害の容疑で起訴された。
そのきっかけは文書生成AI。
AIに仕事を奪われたと語る相川だが、紀伊は疑念を抱いていた。
幸か不幸か
あるベトナム人親子を襲った悲劇。
複雑な要因が絡み合う中、日向と紀伊は真相に辿り着けるか。
そして、部長に出されていた課題「紀伊真言が嘘を見抜けるか見抜け」
日向が出すその答えとは、、
感想
法廷が舞台の連作短編集になっていて、嘘が見抜けるという裁判官と新米刑事補の探り合いがとても読み応えがありました。
ある一つの特殊詐欺事件を中心に全ての物語が繋がっており、展開がさらに変わっていく中で法廷について学べる要素もありました。
「紀伊真言が嘘を見抜けるか見抜け」という課題が物語の根幹として存在し、それを一切崩すことなく展開される事件と繋がりを見せる人間模様。
ミステリーなのですが、猟奇的殺人やトリックという類ではなく、人間模様の裏側や行動原理を紐解くハウダニットのような内容であり、それらは現代にリンクしているようにも思えました。
今回の『嘘か真言か』は判事補に焦点を当てられた作品ですが、判事が主人公の物語は初めてな気がします。
そう思っていたら五十嵐さんは裁判所書記官の経験もあるようですね。
また、新たなリーガルミステリーの片鱗を見せてくれました。
こんな人にオススメ
・リーガルミステリーが好き
・新社会人で人間関係に悩みがある
・情報分析が得意
連作短編集ですが、全てにつながりがあり読みやすいと思います。
一つの事件を中心に描かれる人間模様と新人判事補の成長、そして、出された課題の答え。
見どころ満載の作品です。この作品に出会えてよかったと心から言えます。
『嘘か真言か』ぜひ読んでみてください。