今回紹介するのは織守きょうやさんの『殺人と幻視の夜』です。
織守きょうやさんの作品を読むのは4作目です。初めて読んだ『花束は毒』に感銘を受けて以来、注目の作家さんです。
織守きょうやさんは1980年ロンドン生まれ。
2012年『霊感検定』で第14回講談社BOX新人賞Powersを受賞し、デビュー。弁護士として働きながら小説を執筆。
2015年『記憶屋』で第22回日本ホラー小説大賞読者賞を受賞。同作はシリーズ化され累計60万部を突破。映画化でも話題になりました。
ほか『花束は毒』『彼女はそこにいる』『隣人を疑うなかれ』『キスに煙』など著書が多数あります。
『隣人を疑うなかれ』の紹介記事はこちらをクリック。
『キスに煙』の紹介記事のリンクはこちらをクリック。
当ブログでは、なるべくネタバレの無いよう、あらすじ・感想を書いております。
あらすじ
大学生・久守は触れた人の後ろ暗い秘密が視える幻視能力に、幼い頃から苦しんできた。
しかしある日、美大生の佐伯に触れ、話題になっている残忍な連続殺人の犯行を幻視してしまう。
この事件を止めるべく、懐に入り、証拠をつかもうとするものの、佐伯と交流を重ねるうちに、孤独だった久守は本当の絆を感じ始める。
犯行を止めるため、能力を駆使する彼の友情はどんな結末を迎えるのか?
一気読み必至のノンストップ・ミステリ!
注目ポイント
久守の特殊能力
主人公・大学生の久守は触れた相手の後ろ暗い秘密が視える特殊能力に悩んでいた。
相手の触れた途端、視界が変わり数秒間だけその相手の後ろ暗い秘密の場面を幻視するのである。
それが過去の出来事なのか、未来に起こる出来事なのかは分からない。
美大生・佐伯
ボランティアで知り合った美大生・佐伯。
コミュニケーション能力が高く、人柄も良い彼に友情を感じ始めた久守であったが、彼に触れた途端、巷で話題になっていた連続殺人事件の現場が視えてしまう。
彼が殺人犯なのか。
それを止めるべく、久守は動き始めるが、、
久守の葛藤
佐伯に怪しまれないよう能力を駆使しながら事件の証拠を集める久守。
しかし、佐伯に接するほどどうしても彼が殺人犯とは思えない。
そして、決定的な証拠を見つけてしまうが、通報するのにも躊躇してしまう。
そんな中、物語はあらぬ方向に動き始める、、
感想
自分の大切な人の秘密を知った時、あなたならどうしますか?
何か事情があるかもしれないと信じるもの、正当な罰を受けてもらうべく動くもの、幻滅し離れるもの。
きっと、人それぞれだと思います。
今回のように友人が殺人の犯人かもしれないと分かった時、どうするか。
私も久守と同じように証拠を探すべく奔走すると思います。
そう、無実である証拠です。
その中で、やはり犯人である可能性が高いと分かった場合、正当な罰を受けてもらうべく動きます。
そして、本当に人を殺めていた場合、縁を切るでしょう。
いくら大切な人でも殺人犯とは付き合えません。
どんな事情があったとしても、どこかで理性が働き人を殺めるまではいかないはずです。
自分の衝動に歯止めが効かず、逸脱した行為を犯してしまうのは、はっきり言って異常者です。
私ならそんな人とは付き合えません。
どんなに親しい人間でも、結局のところ本当の顔は分かりません。
だからこそ面白くもあり、恐怖でもあります。
佐伯の人柄の裏に隠れる得体のしれない危うさと、そんな佐伯に本当の友情を感じ始める久守の葛藤が繊細に描かれていました。
能力を駆使し、立てた仮説が覆されてしまう。
そんな中、物語は意外な展開を迎えます。
人間の多面性に切り込んでいく内容と揺り動かされる久守の心理描写に、とても惹き込まれてしまいました。
こんな人にオススメ
・初対面の人とすぐに仲良くなれる
・人を疑いがち
・友人と呼べる人が少なく、孤独を感じている
特殊設定ではありますが、友情と葛藤、人間の多面性を描いている作品です。
そして、迎える意外な結末にも注目してほしいです。
『殺人と幻視の夜』ぜひ読んでみてください。