田舎暮らしの30代看護師
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フィクション

『成瀬は信じた道をいく』宮島未奈 最高の主人公再び

 

2024年本屋大賞の結果が発表され、宮島未奈さんの『成瀬は天下を取りにいく』が大賞受賞となりました。

宮島未奈さん、大賞受賞おめでとうございます。

本日紹介するのは、その続編となる『成瀬は信じた道をいく』です。

宮島未奈さんは、1983年静岡県富士市生まれ。

滋賀県大津市在住。京都大学文学部卒。

2021年「ありがとう西武大津店」で第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞。

2023年同作を含む『成瀬は天下を取りにいく』でデビュー。2024年本屋大賞を受賞。

本書はその続編にあたります。

『成瀬は天下を取りにいく』の紹介記事はこちら。

当ブログでは、なるべくネタバレの無いよう、あらすじ・感想を書いております。

 

あらすじ(帯表紙より)

 

唯一無二の主人公、再びーー。

と思いきや、

まさかの事件が勃発⁉︎

我が道を突き進む成瀬あかりは、今日も今日とて知らぬ間に、多くの人に影響を与えていた。

「ゼゼカラ」ファンの小学生、成瀬の受験を見守る父、近所のクレーマー(をやめたい)主婦、観光大使になるべくして生まれた女子大生・・・個性豊かな面々が、新たな成瀬あかり史に名を刻む。

そんな中、幼馴染の島崎が故郷に帰ると、成瀬が書置きを残して失踪しており・・・!?

 

 

感想

前作同様、最高の主人公再び。といったところでしょうか。

むしろ、パワーアップして帰ってきましたね。

今作も短編5篇に中に成瀬ファンの小学生、受験生YouTuber、近所のクレーマー、観光大使女子大生など、私からすれば個性の強い面々に出くわす成瀬ですが、その個性さえも凌駕する個性の塊であり、唯一無二の存在が成瀬あかりです。

個性と個性がぶつかり合うのではなく、互いに認め合い尊重する姿が読んでいて心地よく、登場人物のキャラクターそれぞれの魅力を引き出している作品だと感じました。

成瀬には老若男女を惹きつける力があり、とにかく有言実行、誰の意思をも介入させず、ただ自分がやりたいことを一切の妥協を許さず、真摯に取り組みます。

「先のことはわからないからなんとも言えないが、、。何になるかより、何をやるかのほうが大事だと思っている。」(引用)

主人公という属性の特徴は、自分がやりたいと思ったからやる、といった行動原理に尽きると思います。

成瀬は勉強も運動もそつなくこなし、集団の中で群れることなく、ただ淡々と自分のやりたいことを突き詰めていきます。その全員に好かれるわけでなく、実際、厄介な女と邪険にされることもあり、そんな人たちとも距離をおかず、堂々と接していきます。

その圧倒的自分本意な行動に人は驚きつつも目が離せなくなり、気づけば自分もその一端を担いたいと思わせてくれます。

「わたしは呉間氏のお客様の声に一目置いていたんだ。・・(省略)」

喜びで体の芯が熱くなるのがわかる。わたしはなぜか、許されたと思った。

「しかし篠原もたいしたものだ。(省略)」

成瀬がこんな気の利いたことを言えるなんて、ちょっとびっくりした。成瀬に言われたら本当に自分がたいしたものであるように思えてくる。

成瀬の言葉はなぜ、人の心に響くのか。

それは、彼女の言動には嘘偽りや社交辞令が一切ないからです。

社交辞令がないといっても、気が利かない、デリカシーがないという類の話ではなく、

成瀬あかりは余計なことは口にせず、自分の信念、正義を貫き通すという思考が根幹にあるように思います。

そして、それが他人とは違っていたり、不快にさせようならば、それを認め、自分に非があるならば、素直に謝罪する。

その誠実さが成瀬が人を惹きつける所以であり、魅力だと感じました。

成瀬自身の個性を相手に押し付けるのではなく、相手を認めた上で、自分の個性に巻き込んでいく。

それは、成瀬を取り巻く周囲の人間あってこそで、その関わりが成瀬という個性の中の人間味を引き出し、血を通わせています。

そして、あらゆることに挑戦していく姿に惹かれ、応援したいどころか自分も何か協力したくなる。

そんな不思議な魅力を持つ成瀬あかりから目が離せませんでした。

 

こんな人にオススメ

 

・何か挑戦したいことがある
・正義感が強い、もしくは臆病である
・成瀬あかりのファンである

『成瀬は天下を取りにいく』を読んでおくことをオススメします。

そして、成瀬あかりという圧倒的キャラクターに魅了された状態で今作を読むと、もっと魅了されること間違いなしです。

短編5篇の200ページと読みやすい作品となっています。

ぜひ読んでみてください。