今回は白井智之氏著作『エレファントヘッド』を紹介します
白井智之氏は1990年千葉県生まれ。
2014年に『人間の顔は食べづらい』が第34回横溝正史ミステリ大賞の最終候補作となり、同作でデビュー。
23年に『名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件』で第23回本格ミステリ大賞(小説部門)受賞、「2023本格ミステリ・ベスト10」第1位獲得。
他の著作に『そして誰も死ななかった』『ミステリー・オーバードーズ』『死体の汁を啜れ』など多数あります。
当ブログでは、なるべくネタバレの無いよう、あらすじ・感想を書いております。
あらすじ
精神科医の象山は家族を愛している、だが彼は知っていた。
どんなに幸せな家族も、たった一つの小さな亀裂から崩壊してしまうことを。
やがて謎の薬を手に入れたことで彼は人知を超えた殺人事件に巻き込まれていく。
感想
冒頭から謎展開と緻密なトリックにより、心を掴まれ中盤から後半にかけての怒涛の展開、物語の二転三転があり、ラストの解決までの流れが圧巻でした。
謎解き小説には多重解決という趣向があり、これは一つの謎に対して、複数の異なる推理を並べる形式のことです。
些細な亀裂から家庭の崩壊を招くことを恐れるあまり、象山の身の回りでめまぐるしい変化が起こり、読者を惑わせます。
あまりにも目の前で展開する光景が変わるので、この小説が一体どの方向へと進んでいくのか見当が付きませんでした。
そして更に読み進んでいくと、いつの間にか謎解きミステリに変貌していました。
読み終わって気づいたことが、本作は純粋な犯人当て小説だったということです。
舞台設定は特殊で、その中で犯人を見つけなければならなくなる理由、そのために適用される規則。いわゆる特殊設定ミステリーで、ここにしかないルールでここでしか起きないような事件の謎を解く、という楽しさが存分に味わえます。
一つの謎から複数の展開と読者を物語の世界観に引き込む描写力が圧巻で、特殊設定であるからこそ多重解決という趣向が成り立っていたように思います。
設定が複雑ですが、その中で提示されるルールはシンプルで物語の押し引きが巧く、木を隠すなら森の中では無いですが、伏線の張り方も設定が特殊であるからこそ大胆な伏線が成り立つ、いわば全てが伏線だったように感じました。
こんな人にオススメ
・猟奇的なミステリーが好き
・グロテスクな表現が苦手でない
・小説をいっき読みしたい
事前情報をなるべく入れない状態で読んで欲しいので、あまり多くは語れないのですが、特殊設定でグロテスクな描写があります。苦手な方は控えた方がいいです。
けっこう頭を使うのでちまちま読むよりいっき読みがお勧めです。
『エレファントヘッド』ぜひ読んでみてください。