人の二面性とは怖いものですね。表では優雅に振る舞っていても裏では何を考え行動しているかは分かりません。
誰にでもあることでしょうし、普段から人を見抜く審美眼を磨いておくと良いかもしれません。
本日は加賀恭一郎シリーズ最新作である東野圭吾氏著作『あなたが誰かを殺した』を紹介します。
東野圭吾氏は1958年大阪府生まれ。
他の著作に『白鳥とコウモリ』『透明な螺旋』『マスカレード・ゲーム』『魔女と過ごした七日間』や、シリーズ第一作にあたる『卒業』から『新参者』『麒麟の翼』『祈りの幕が下りる時』『希望の糸』など、現在十一作が刊行されている「加賀シリーズ」ほか多数あります。
当ブログでは、なるべくネタバレの無いようあらすじ・感想を書いております。
あらすじ(帯表紙より)
8月の別荘地。様々な家族が夏を過ごすためにやってくる。
総合病院を経営する夫妻と我が儘な一人娘、その婚約者。大企業の会長とやり手の妻とその部下家族。
経営者の妻と公認会計士の夫のパワーカップルと、中学生の娘。別荘地に移り住んだ未亡人、その姪夫妻。そして、いまは空き家になっている別荘。
彼らには、毎年恒例の行事があった。それは優雅なバーベキュー・パーティ。
いつも通り開催されたその催しが、思いがけない悲劇の幕開けとなる。
事件に巻き込まれた家族たちは、真相を自分たちの手で解き明かそうとする。
そこに現れたのは、長期休暇中の刑事・加賀恭一郎。
私たちを待ち受けていたのは、想像もしない運命だった、、
主な登場人物
Ⅰ栗原家
栗原正則 〜 公認会計士
栗原由美子 〜 正則の妻、美容院経営
栗原朋香 〜 正則と由美子の子、中学3年生
Ⅱ櫻木家
櫻木洋 〜 櫻木病院経営
櫻木千鶴 〜 洋の妻
櫻木理恵 〜 洋と千鶴の娘、病院事務、25歳くらい
的場雅也 〜 理恵の婚約者、内科医
Ⅲ山之内家
山之内静江 〜 未亡人、40歳すぎ
鷲尾春那 〜 静江の姪、看護師、20代後半
鷲尾英輔 〜 春那の夫、薬剤師
Ⅳ高塚家
高塚俊策 〜 会社経営者、70代半ば
高塚桂子 〜 俊策の妻、70前
小坂均 〜 俊策の部下
小坂七海 〜 均の妻
小坂海斗 〜 均と七海の子、小学6年生
その他
金森登紀子 〜 鷲尾春那の先輩看護師
桧川大志 〜 連続殺人犯
久納真穂 〜 栗原朋香の寄宿舎指導員、20代前半
榊刑事課長 〜 地元警察
加賀恭一郎 〜 警視庁刑事部捜査一課の刑事、金森登紀子の友人
感想
別荘地で起きた連続殺人事件。パーティの夜、一体何が起きたのか、、
事件の関係者が揃って、「検証会」が行われることになります。それぞれの家族が奪われたのは偶然なのか、必然なのか。
「犯人あて」でも「動機あて」でもないこれぞミステリーの定番といった展開を見せられた気がします。
殺人事件の犯人は物語の序盤で自ら名乗りを挙げます。そして、事件は解決したかに思われましたが、犯人は取り調べに対して、全容を語ろうとしません。
そこで当事者たちは自分たちで事件当日に何が起きたかを検証しようというのですが、そこで人間の裏の顔が次々と明かされていきます。
「人間というのは複雑です。裏表があるのは当然で、人によっては裏の裏があったり、そのまた裏を隠していたりします。一筋縄ではいきません。」(引用)
前半部分では、それぞれの事件当日の行動などが描かれているのですが、後半部分で真実が明らかになるにつれて、読み返してみたときに犯行に関わっている人物の行動や心理描写が不自然なくらいバッサリと描かれていないんですね。
ミステリーとしては伏線やミスリードは秀逸だと思いましたが、真実がわかった後に前半部分を読むとやはり不自然さが拭えませんでした。
だったら誰の視点かは伏せて手記調に書くとか、心理描写を控えて行動のみを描くようにすれば、よりミステリーとして自然な作品になったのではと感じました。
とはいえ今回は謎解き要素よりも人間の二面性に焦点を当てた作品。中盤から終盤にかけての緊迫感や次々と謎が明らかになっていくテンポ感、最後の最後のもうひと展開、そして、タイトルの意味など。
畳み掛けるような展開の数々はさすが東野作品といったところです。余すことなくミステリーが堪能できました。
こんな人にオススメ
・ミステリー初心者
・東野作品が好き
・謎解きよりも、アッと驚く展開が好み
登場人物が多めで読むのが大変に思えますが、関係性はシンプルなのでそこは大丈夫かと思います。
難解なトリックなどはほとんど出てこないため初心者でも読みやすい作品となっています。数々のミスリードや伏線をぜひ堪能ください。