田舎暮らしの30代看護師
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ミステリー

『復讐は合法的に』三日市零 異色のリーガルミステリー

 

弁護士と聞くと法的知識や論理的思考、弁論力を武器に困っている人に寄り添ってくれる強い味方というイメージですよね。

私も一度だけ弁護士に相談したことがありますが、親身になって話を聞きいてもらえ、的確なアドバイスをいただくことができました。

しかし、中には司法の眼を掻い潜って引き起こる事件や、法的にどうすることもできない案件も存在するかもしれません。やりようもなく泣き寝入りという結末に至ることもあるでしょう。

そんな中、どうしても一矢報いたいと思った時に合法的な復讐と聞くと、どこか不穏で怪しげな雰囲気を感じませんか?

本日は異色のリーガルミステリー・三日市零氏著作「復讐は合法的に」を紹介しようと思います。

三日市零氏は1987年生まれの福岡県出身で、第21回「このミステリーがすごい!」大賞・隠し玉として本作でデビューしました。

そして、2024年5月に第2弾となる『復讐は芸術的に』を刊行しました。

『復讐は芸術的に』の紹介記事のリンクはこちらをクリック。

当ブログではなるべくネタバレの無いようにあらすじ・感想を書いております。

 

あらすじ(裏表紙より)

 

六年付き合った彼氏に手酷く裏切られたOL・麻友が出会ったのは「合法復讐屋」エリス。弁護士資格を活かして麻友の復讐を代行したエリスは、その後も様々な依頼をこなす。

妄想じみた依頼から辿りつく、殺人事件の意外な真相とは。

法律の通じない権力をもつ相手に、エリスはどう立ち向かうのか。

そして最後のターゲットはエリスと同じ「復讐屋」、、

異色の連作リーガルミステリー!

 

case1 女神と負け犬

 

中西麻友は六年間付き合っていた彼氏、坂口俊介から別れを告げられた。

二人で貯めていた結婚資金も使われてしまい、麻友は途方に暮れていた。

絶対に許さない、いや、許したくない。

そんな中、目の前に一人の女性が現れる。

「面白そうね。手伝ってあげましょうか。」

陰がさす笑みは、女神のようにも悪魔のようにも見えた、、

case2 副業 〜サイドビジネス

 

新宿区の路上で五十代の男性が突き飛ばされ、縁石に頭をぶつけ間もなく死亡した。

被害者は会社経営者である肥後雅弘。

傷害致死の容疑がかかっている重田晴臣の父・靖は事件について詳細を調べてほしいとエリスに依頼する。

晴臣と肥後は面識がなかったという。

エリスは晴臣の部屋を調べるとそこにあったものに違和感を覚える、、

 

case3 潜入

 

雑誌記者である灰島涼斗は、児童に対する強制わいせつ事件についての依頼をエリスに持ちかける。

容疑者は学習塾勤務の早乙女創真。

早乙女は一度は逮捕されるも国会議員である父により示談に持ち込み、刑罰を逃れていた。

そんな中、エリスの助手である楓は調査のため、早乙女の勤務する学習塾に入塾することとなる、、

 

case4 同類

 

園田琴子は大学生である娘・美海を味亭太に殺されたという。

味亭太とはTwitterで話題の暴露系の愉快犯であり、「正義の復讐者」と言われている。

一切証拠を残さないネット犯罪のプロにエリスはどう立ち向かう!?

 

感想

 

とても読みやすく、かつ繊細で構築が緻密に練られている作品だと感じました。

case1 では序章に相応しく、エリスの人となりや合法復讐屋という性質、なぜ復讐屋をやっているのかといった世界観の紹介から入り、一方的に別れを告げられた元彼への復讐というリアリティに溢れる設定で演出されているため、物語へ入っていきやすかったです。

case2 ではやや手法を変え、物語の首謀者の視点とエリスの視点を交えつつ展開され、何か不穏なことが起こっているがそれが最後まで明かされないという、なんとも作者の手のひらの上で転がされているような感覚に襲われました。

そして、case3、case4と続くわけですが、各章とも伏線の回収や人物造形、どんでん返しとも言われるような驚きの展開が自然で秀逸なため、みるみるうちにその世界観へと引き込まれてしまいました。

復讐により救われる人がいる。どんなに道徳から外れようと過去にケリをつけ、前に進むことができる。それを手伝う人がいたっていい(引用)。

しかし、復讐をするにはそれ相応のリスクを背負う覚悟が必要なのも明白です。

復讐により救われる人もいれば、同等の数だけ堕ちてしまう人も存在するわけです。

攻撃するということは攻撃される覚悟を持たなければならない。

エリスの覚悟や信念がしっかりと描かれており、読書も考えさせられるものがありましたし、「合法的な復讐」というものがさほど現実離れしているとも限らないと感じました。

そして、独特の台詞回しやキャラクターのギャップも注目ポイントですね。エリスだけでなく各登場人物の造形もしっかりしており、その個性にも魅了されました。

 

こんな人にオススメ

 

・リーガルミステリーが好き
・スカッとするような復讐劇が好き
・ミステリー初心者

 

各章がそれぞれで完結しており、全四章からなる短編集と捉えて差し支えないと思います。

しかし、読む順番は前から順に読むことをおすすめします。

ネタバレになるので理由は言えません。一話完結の連続ドラマのようなものといえばわかりやすいかもしれません。

ミステリー初心者でも読みやすく、その続きの展開が気になる異色のリーガルミステリー「復讐は合法的に」ぜひ読んでみてください。