田舎暮らしの30代看護師
自己満
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ミステリー

『#柚莉愛とかくれんぼ』真下みこと アイドルのリアル 

 

突然ですがみなさん、SNSはやっていますか?

私はTwitterとInstagramをやっています。主に情報収集や情報発信のツールとして使っていますが、人によっては連絡手段だったり暇つぶしの娯楽だったりと用途はそれぞれでしょう。

しかし、お互いの顔の見えないネット社会。過激で度がすぎた書き込みは時として凶器になりうるということは忘れないほうが良いのかもしれません。

本日は、アイドルとSNSを題材にした小説・真下みこと氏著作「#柚莉愛とかくれんぼ」について紹介しようと思います。

著者の真下みこと氏は大学在学中に本作でデビュー。本作は2019年、第61回メフィスト賞受賞作です。

この作品を読もうと思ったきっかけは私自身、アイドルが好きだからです。画面の向こう、はたまたステージの上に立つ彼女たちは私たちファンに夢や希望、元気を与えてくれます。

しかし、それはほんの一部分であって表には見せないプライベートな側面が必ずあるわけです。それが期待と違った時に一部の人間はSNSを使って叩きます。

こういったことは匿名性があり、巧妙かつ発信元を特定されにくいため厳しく処罰されにくい傾向にあります。ネット社会の弊害といいますか、今後ますます対策が必須になることでしょう。

 

当ブログではネタバレの無いようにあらすじ・感想を書いております。

 

あらすじ(裏表紙より)

 

アイドルグループ「となりの☆SiSTERs」、僕の推しは青山柚莉愛。

その柚莉愛が動画配信中に血を吐いて倒れた。

マジか!大丈夫なのか?

でも翌日、プロモーションのためのドッキリだったってネタばらしが、、、

本気で心配した僕らを馬鹿にしやがって。

ありえない、許さない!

SNSで柚莉愛を壊してやる!

 

 

主要な登場人物

 

・青山柚莉愛 〜 三人組のアイドルグループ「となりのSiSTERs」のメンバー。センターを任されている。CDの売り上げが伸びず、このままだとメンバーの増員をするとマネージャーから言われる。

・江藤久美 〜 となりのSiSTERsのメンバー。メンバー内ではしっかり者のお姉さんキャラ。

・南木萌 〜 となりのSiSTERsのメンバー。メンバー内ではぶりっ子キャラ。

・田島さん 〜 となりのSiSTERsのマネージャー。東大卒。

 

感想

 

アイドルやタレント、歌手、俳優などメディアに出る職業は様々ですが、彼らは一般人では手の届かない世界の人間です。

彼らは私たちに夢や希望、非日常感などを与えてくれます。スポーツ選手だってそうです。

そんな彼らに私たちは夢をもらう分、期待し憧れを抱きます。それは明日を生きる活力になりうるでしょう。

しかし、大事なのは私たちが見ているのは彼らのほんの一部分に過ぎないということです。

アイドルが24時間アイドルでいられるわけがないのです。彼女たちにも自分の生活があり、人間らしい部分もあります。心身の全てが綺麗で美しいはずがありません。

メディアやステージの切り取られた部分だけを見て、過度に期待し幻想を抱いておきながら期待や思いと違った部分が見えた時、裏切られたと感じます。

非常に身勝手で傲慢だと思いませんか?

裏切りとは、過度な期待と幻想の裏返し。つまりは、アイドルだからこうあるべきだとか、こうであるはずだといった、その人について都合のいい部分しか見えておらず、知らない部分が見えた時に使われる言葉です。

そして、アイドルを応援するということは、自分の知らない部分や見えていなかった部分を許容する覚悟を持つということだと私は考えます。

よくあるのが恋愛禁止のアイドルの熱愛報道ですね。

私は冒頭でも書いた通りアイドル好きです。

ですが、応援しているアイドルの熱愛報道が出ても裏切られたとは思いません。

年頃の女性が恋愛に興味を抱くのは当然のことですし、その相手に癒しを感じていたかもしれません。その相手は日頃お世話になっている人で断れなかっただけかもしれません。

何が言いたいのかというと、事実は当人たちにしかわからず、私たちがとやかく考えることではないということです。

恋愛禁止のアイドルのルール違反を擁護するわけではありません。報道が出てしまうことに対しては彼女たちにも非はあるでしょう。しかし、彼女たちの環境には誘惑もたくさんあるでしょうし、恋愛禁止のアイドル近づく相手にも非はあると私は考えております。

そして、そのたった一部分を切り取った報道を見て失望し、ファンを辞めてしまうのは勝手ですが、それをネット社会にぶつけるのはお門違いです。

それを許容できない一部のファンや過度に期待し盲信する人たちは、SNSという匿名性が高く、安全な場所から誹謗中傷をしたり過激な書き込みをします。

それが時に相手を傷つけ、取り消しのつかない事態を招きかねないということを忘れてはなりません。

この作品は、心理描写や伏線、ミスリードなどミステリーとしても秀逸ながら、ネット社会という現代に一石を投じる作品だと感じました。

アイドルの裏側やファン、そしてSNSという身近なものをここまでかというほどリアルに描いており、クライマックスが近づくにつれページをめくる手が止まりませんでした。

そして、真相が明らかになるラストシーンは鳥肌ものです。

 

こんな人にオススメ

 

・アイドル、タレント、歌手、スポーツ選手など応援する著名人がいる。
・SNSをやっている。
・仕事に対してやりがいがないと感じている。

この作品は青山柚莉愛の視点と、柚莉愛について匿名でSNSに書き込みをするファンの視点で物語が進んでいきます。

売れ行きが伸び悩み、時には自分がやりたくない仕事も引き受けなければならないアイドルの葛藤やグループ活動であるが故の嫉妬や様々な感情、そして、一部のメディア演出に対して過激化するファンの心理とSNSという顔の見えないネット社会のリアルが繊細かつ丁寧に描かれています。

いったいどんな人物がネットや報道を見て炎上騒ぎを引き起こすのか、そこも注目ポイントですね。

最後に、本当のファンならどんなことが起ころうとその人を許容し、応援し続ける覚悟を持つこと、そして、間違っても顔の見えないネットで攻撃することはやめていただきたいです。

「#柚莉愛とかくれんぼ」ぜひ読んでみてください。