人は誰しも、嘘をついてしまうこと、隠し事をしてしまうことはあるでしょう。それは家族に対してだったり、はたまた恋人、友人や同僚と様々でしょう。
では、皆さんは決して暴かれたくない秘密はありますか?
本日はある秘密を抱えた夫婦を描いた作品・桜井美奈氏著作「殺した夫が帰ってきました」について紹介しようと思います。
桜井美奈氏は2013年に第19回電撃小説大賞で大賞を受賞しデビューしました。当ブログでは桜井美奈氏の他の作品として「私が先生を殺した」も紹介しております、紹介記事のリンクはこちらをクリック。
当ブログでは、なるべくネタバレの無いようにあらすじ、感想を書いております。
あらすじ(裏表紙より)
都内のアパレルメーカーに勤務する鈴倉茉菜。茉菜は取引先に勤める穂高にしつこく言い寄られ悩んでいた。
ある日、茉菜が帰宅しようとすると家の前で穂高に待ち伏せをされていた。茉菜の静止する声も聞かず、家の中に入ってこようとする穂高。その時、二人の前にある男が現れる。
男は茉菜の夫を名乗り、穂高を追い返す。男はたしかに茉菜の夫・和希だった。
しかし、茉菜は安堵することはなかった。なぜなら、和希はかつて茉菜が崖から突き落とし、間違いなく殺したはずで、、
秘められた過去の愛と罪を追う、心をしめつける著者新境地のサスペンスミステリー!
主要な登場人物
鈴倉茉菜 〜 都内のアパレルメーカー勤務。東北の出身で幼少期は母親からネグレクトに遭い、学校にも通わせてもらえなかった。夫の和希からDVを受け、5年前に崖から突き落として殺してしまう。
鈴倉和希 〜 茉菜の夫。5年前に茉菜により崖から突き落とされ、確かに命を落としたはずっだったが、突如、茉菜の前に再び姿を現す。本人は当時の記憶を無くしており、茉菜にDVをしていた姿は鳴りを顰めていた。記憶を無くしているとはいえ、夫ということで茉菜と一緒に暮らすこととなる。
穂高 〜 茉菜の取引先に勤務する男性。茉菜に好意を抱いており、偶然を装い自宅前で待ち伏せるなどストーカー行為をはたらいていた。茉菜が独身だと思っていたため、和希により追い返されたときは驚いていた。
羽瀬修斗 〜 和希の知り合いの警察官。時々、和希と連絡を取り合っており、茉菜を紹介した際、和希とは4ヶ月前に知り合ったと言っていたが果たして、、
感想
本作は全四章からなるミステリー作品となっています。前半はタイトル通り、5年前に殺したはずの夫が当時の記憶を失った状態で現れ、共に生活を始めるという不穏な始まりが印象的です。
DVを受けていた時の恐怖や記憶がいつ戻るかもわからない不安感、そして過去の罪が暴かれてしまう緊張感が伝わってきて、とても読み応えのある作品でした。
ところどころの会話や描写に違和感を覚える箇所があり、本当に記憶喪失なのか、どこまでが当時の和希でどこからが現在の和希なのか、曖昧さを感じる部分がありました。記憶を失いながらもどうやって茉菜のもとに帰ってきたのか、そもそも何か隠しているのではないか、そんなミステリアスさを抱えつつもそれを読者に悟らせない描写や作者の駆け引きに引き込まれてしまいました。
そして、真相が明らかになっていく第三章後半から第四章、エピローグにかけてはこれまでの全てが覆る怒涛の展開です!!
二転三転とし、次々と明らかになっていく真実。殺したはずの夫が帰ってきた本当の目的、そして茉菜が過去に犯した罪、、
読み終え、全てが繋がったとき戦慄と共に震えました。こんなにキレイにまとめてくるかと圧巻の結末でした。
こんな人にオススメ
・夫婦間、または恋人間で隠し事を抱えている
・決して暴かれたくない秘密がある
・うろめたい過去がある
タイトルの強烈さが目をひき、物語の世界観に引き込まれてしまいました。どんな結末が待ち受けているのだろうとイッキ読み必至の作品だと思います。茉菜の抱えている過去、和希の抱えている過去、全ての真相を知った上でもう一度冒頭から読み返してみると、また違った世界が見えてくるかもしれません。そう思わせてくれる作品でした。