田舎暮らしの30代看護師
自己満
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恋愛

『マリエ』千早茜 離婚は失敗?恋愛と結婚は別?

 

 

現代の日本では夫婦の3組に1組は離婚しているといわれています。

女性の社会進出、価値観や文化の変化、生活の多様化や経済面の変化など、さまざまな要因が考えられます。

私も離婚を経験している身ですが、今、不幸かと聞かれるとそうではありません。

もちろん、後悔や反省はありますが、独身なりに新たな幸せへの道を歩み始めたので。

そもそも離婚を考えての結婚なんて初めからしませんよね。結婚は当事者だけでなく、お互いの家族も巻き込むものですから。

生半可な気持ちなら結婚なんてしない方がいいです。

しかし、幸せになるために結婚するように、幸せになるための離婚もある、そんな時代なのかもしれませんね。

本日は離婚を機に新たな生き方を模索し始めた女性の物語・千早茜氏著作『マリエ』について紹介していきます。

千早茜氏は1979年北海道生まれ。2008年「魚」(受賞後「魚神」と改題)で第21回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。

21年『透明な夜の香り』で第6回渡辺淳一文学賞、23年『しろがねの葉』で第168回直木賞を受賞。

他の著書に小説『男ともだち』『神様の暇つぶし』『ひきなみ』『赤い月の香り』など、食エッセイ『わるい食べもの』シリーズなどがあります。

また、当ブログでは『赤い月の香り』を紹介しております。記事のリンクはこちらをクリック。

 

当ブログでは、なるべくネタバレのないようあらすじ・感想を書いております。

 

あらすじ(帯表紙より)

コロナ禍下、40歳を前に離婚した桐原まりえは、新たな生き方を模索し始める。

「これから恋愛できるわね」、年かさのかっこいいマキさんはそう言うが、まりえはすべて自分の自由にできる生活が一番大事でそれを危うくする欲望に呑み込まれたくはない。

でも、なにか不安で、なにか取りこぼしている気がする、、

そんな折、些細なきっかけと少しの興味から、まりえは結婚相談所に登録する。

そこで見聞きする世界は、思いもよらないものだった。

切実な「現実」や結婚に対する価値観を次々と突きつけられ、年下の恋人とのあいだでも揺れながら、まりえは考え続ける。

 

 

注目ポイント

離婚から始まる再スタート

まりえは40歳を前にして元夫・森崎と7年半の夫婦生活にピリオドを打ちます。

夫から「恋愛がしたい」という理由で離婚を切り出され、約2年間の話し合いの末、応じることにしたまりえ。

後日、一緒に飲んでいたマキから「私達の世代は女は離婚すると不幸になった。だから私は結婚しなかった。離婚したくないから。」と言われる。

時代が変化していく中、果たして離婚することは不幸なのか?

結婚相談所で見えてくる多様な価値観

結婚相談所でお見合いをする男性、同じく利用者の女性などと言葉を交わすたび、次第に自分が大事にしていきたいものが浮き彫りになってくるまりえ。

仕事と家庭、親の介護、妊活、子どもなど結婚すれば嫌でも突きつけられるものたち。

自分の人生と天秤にかけ、果たしてどんな答えを出すのか注目です。

そして、描く本当の幸せ

離婚してから、まりえの取り巻く世界は少しずつ変わっていきます。

年下の恋人、結婚相談所の男性、友人などと触れ合う中で、自分の知らなかった世界を目の当たりにしてきたまりえ。

一人で描くもよし、二人で描くもよし、幸も不幸も自分が決める、、

果たしてまりえが出した結論とは、、

 

感想

 

結婚に対する考え方や本当の幸せとは何かを問われる作品だと感じました。

恋愛がしたくなったという理由で離婚を切り出されて、それを了承し、二人で離婚届を出しに行くところから物語は始まります。

「恋愛なんて外で好きにしたらいいじゃない!」

わからなかった。恋愛をしたいから離婚するのが普通なのか、結婚していても隠れて恋愛するのが普通なのか。はっきりしていたのは、どちらも私の価値観とは違うということだった。(引用)

筆者もまりえ同様、そのような価値観は持ち合わせていません。

恋愛したいから離婚してくださいなんて無責任で理不尽だと感じます。

しかし、お互いの価値観が合う、合わないなんて付き合いが長くても分かりようのないものです。

むしろ、問題はその先にあり、合わないと感じたときにどう動くのかが重要です。

ある程度は許容し、お互い様だと割り切るのか、どうすれば上手く収まるのか歩み寄りは必要なわけで、夫婦生活を進める中で最低限の営みだと思います。

私の幸も不幸も、私が決める。そう、決めた。

私はただ、他人に自分の幸も不幸も決めつけられたくないだけだ。(引用)

離婚が失敗や不幸だとは思いません。経験として糧になるわけですし、次に繋いでまた新たな幸せを見つけていけば良いのですから。そこまで自分を卑下する必要はないと思います。

ただ、恋愛と結婚は別だと私は思います。

「もしかしたら結婚とはこういうことかもしれないですね。」

「自分では選ばない道を往く。ここには七つほど道がありますが、どの道を選んでも山頂には着くんです。楽な道もあれば、山を大回りする時間のかかる道もあります。険しい道も、眺めの良い道もある。でも、道を逸れずに一歩一歩進めば必ず目標は達成します。」(引用)

私がパートナーに望むのは世界を共有することなのかもしれない。色や匂いを記憶に刻んで、また季節が巡っても思いだしたい。そして、思いだしてもらいたい。(引用)

恋愛関係にある内は、お互い見つめ合って幸せを感じるかもしれませんが、結婚してからはそうはいきません。

人生を共に歩んで行くわけですから、同じ方向を見る必要があります。

しかし、どちらかが先陣を切り、引っ張るカタチもあまり良くはないでしょう。

道の途中でどちらかが疲弊したとき、立ち止まる必要があるわけですから。

お互いが視界に入る位置で歩調を合わせながら歩んでいける。

そんなパートナーに出会えるだけでも幸せと呼べるのかもしれませんね。

この作品では、「結婚」「恋人」「パートナー」をテーマに女性が考える自身への価値観、男性が女性に求める価値観、男性が考える自身への価値観、女性が男性に求める価値観などをリアルに鮮明に描いています。

時代の変化とともに選択肢も増え、自由さや正しさ、多種多様な価値観が混在するからこそ、生きづらさを感じてしまうのかもしれません。

そんな中、自分を見つめ直し「幸せ」を掴もうとするまりえの姿と、作者の描く色彩豊かな世界観と表現力に引き込まれてしまいました。

こんな人にオススメ

・離婚を経験している
・結婚や幸せについて考えている
・透明な夜の香りが好き

どちらかというと女性に読んでほしい一冊です。

男性が読んでも共感できるかというと、うーんって感じです。参考にはなると思います。

そして、千早茜さんは匂いや色彩、空気感など五感に訴えかけるものを言語化する天才だと感じました。

透明な夜の香りが好きな方には刺さる一冊だと私は思います。

『マリエ』ぜひ呼んでみてください。